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見知らぬ乗客
「ここで臨時ニュースをお伝えします、今朝午後11時、函館西警察署にて、逃走を続けていた連続誘拐殺人事件の容疑者である蛭間 太郎容疑者が自首しました。詳しい情報についてCMの後お伝えいたします、」 その瞬間、手に持っていたコップを離しリビングの床へと割れてしまった、「ガシャッッン!」コップの割れた破片がリビングに散らばるなか、そんなことを気にせず吾妻はテレビに夢中になった、「奴が…自首した……」その瞬間吾妻は刑事時代のあの日を思い出し始めた、それは、以前住んでいた自宅へと帰宅する際、妻と、当時七才であった娘が、家の中に容疑者が設置させた爆弾に巻き込まれて、二人は今でも帰らぬ人となってしまった、そんな記憶を思い出しながら、吾妻はじっと仏壇に置かれた二人の写真を見つめていた、「捕まったのか…」するとテレビからは蛭間の顔写真がデカデカと映し出された、「ピロン!」 「ピロン!ピロン!」 テレビに目を向けていた吾妻だったが、テーブルに置いていた携帯から複数の通知音が鳴った為、仕方なくテレビから目を離し、携帯を開いた、LINEの通知は見知らぬ人物からであった、LINEのネームは₩$\&¥€$5¥5€と記載されてあり、何者なのか見当もつかなかった、吾妻は焦ってブロックを押そうとしたその時、見知らぬ相手から再びメッセージが送られてきた、その文に吾妻は驚愕した、「奴に復讐する気はないか、」という文であった、吾妻はブロックにする前に一度その見知らぬ相手に通告した、「俺をおちょくってるのか、ふざけたメッセージを送りつけるな」
そう返し、ブロックを押そうとしたその時、再びメッセージが送られてきた、「お前の全てを奪われた男を見逃すのか、奴は精神障害で死刑から逃れる気だぞ、家族が燃やされた復讐に協力してやる」 長々と、まるで自分を知っているような口調でメッセージが書かれていた、ふと顔を上げテレビの方を眺めると、不吉な笑顔で警察に連行される蛭間の姿が映し出された、その時吾妻は決意した、全てを奪った犯人に復讐を誓うと。
「は!」ふと我に帰った吾妻は急いで拳銃の入ったボストンバッグのチャックを閉めると、新幹線が発車するのを待った、「今日も新幹線をご利用くださいましてありがとうございます。この電車ははやぶさ号東京行きです。………」 新幹線に乗り込んでから10分、ようやく車内からアナウンスが流れ始めてきた、しかし、その後ろで騒がしく電話をする男がいた、それは新幹線へと乗車した際、吾妻に後ろからぶつかってきた会社員らしきあの男であった、「こっちはもうじき新幹線が動く、役員には決して伝えるな、後の事は代理のお前に処理は任せたぞ」長々と電話をしていると、新幹線が動き出したタイミングで男は電話を切ると、かけていた眼鏡を外してスーツのポケットチーフへと入れると、シートにもたれ込んで眠りについた、吾妻は思考を遮る男の会話が静まったのを目にしていると、「ピロン!」 シートにかけていたジャケットのポケットに閉まっていた携帯から通知が送られてきた、吾妻はすぐに携帯を取り出し、通知を確認すると、LINEからは極秘での移送計画の情報を提供してきた、例の見知らぬ相手からのメッセージが来ていた、「どうやら予定どおり新幹線に乗り込んだようだな、吾妻氏に蛭間が乗車している場所を教えよう」
見知らぬ相手から蛭間の情報を聞き出す前に一同吾妻は、疑問な点を相手に伺うメッセージを返答した、「どうやって蛭間がいる場所がわかるんだ?」すると見知らぬ相手からすぐに返答が送られてきた、「私はこの新幹線の監視カメラを全てハッキングしている、なので今どこに誰がいるのか知ることが出来ている」 そのメッセージを見た吾妻はふと扉の上に取り付けられている監視カメラに目を向けた、「本当に正しい情報であるのか確かめておきたい、今私が何号車の何処の席にいるのか、応えてください」 吾妻は恐る恐るそうメッセージを送信した、メッセージはすぐに既読がつけられている、返答が来る間吾妻は、本当にハッキングされているのか緊張が走り出していた、その数分後、相手から応えが返ってきた、「6号車、12-A席、隣の席には高齢夫婦が座っているだろう、」すぐに吾妻は携帯から目を離し横を振り向くと、仲良く寄って話し合う高齢夫婦が目に映った、思わず吾妻は座席から立ち上がり、周囲の席を誤魔化しながら見渡し始めた、「これで吾妻氏、信じてくれたかな? 」 そう再びメッセージが送られてきた、吾妻はその瞬間、この6号車にいて、携帯を開いてる人物がいないかを探し始めた、「どこかで見ているんじゃ?」そう心の中で思いながら周囲を見渡していると、現在携帯を開いてる人物三人を見つけ出した、一人は自身の3列後ろの席に座る黒色の帽子とダウンを身につけた若い男、もう一人は反対の列の座席に座りイヤホンを装着する高校生、そして最後の一人は自身の2列前の座席に座る、座席に倒れた時、親切に心配をかけてきた女性であった、この三人がメッセージが送られてきた際に携帯を開いていた、吾妻は信用できる相手であるのか、正体を炙り出すため座席から動き出した、列車の廊下へと出ると、一度吾妻は6号車と7号車を結び付ける連結部分に設置された個室トイレへと向かった、「バタン!」トイレの中へ入ると吾妻は、座ることなくたったままで、見知らぬ相手のLINEに再び返信を返した、「あなたを信用しましょう、もう一度蛭間のいる車両を教えてください 」 するとすぐに返信が返ってきた、 「彼は2号車に乗っています、それと、もしもの事態の為に応援を一人送り込んであります」 そのメッセージを既読すると吾妻はトイレから出た、ゆっくりと携帯を握り締めながら吾妻は6号車の引き扉を開いた、「コツ、コツ、」足音を踏み鳴らしながら自分の席へと戻ろうとしたその時、吾妻は突如足を止めた、この6号車へと乗る乗客を見渡しながら吾妻はその場で、連絡を取り合っていた見知らぬ人物のLINEから電話をかけた、「プルルルルル、プルルルルル」 もしこのタイミングで乗客の誰かから電話がかかってきていたとすれば、その人物が見知らぬ相手の正体である、「プルルルルル!プツン、」しかし、途中で電話は切られてしまった、今度は周囲を振り向きながらもう一度吾妻は電話をかけた、「プルルルルル、プルルルルル、」 その時、「あの、何かあったんですか?」立ち止まる吾妻を気にして後ろから何者かが問いかけてきた、慌てて吾妻は後ろを振り向くと、問いかけてきていたのは、あの親切にしてくれた同年代くらいの女性であった、「顔色が悪そうですけど、大丈夫ですか?」
まさかの事態に困惑する吾妻は思わず電話を切ってしまった、「えぇ、大丈夫ですが」 するとその時、「お姉さん、その方は大丈夫じゃありませんよ、さっきあの男が、彼のバックを漁っているのをわしは見ていたぞ!」そう話しかけてきたのは、吾妻の隣の席に座っていた老夫婦のお爺さんであった、お爺さんは睨みを効かせながら後ろの座席を指差した、吾妻はふとお爺さん差す方を振り向くと、そこには怪しい一人であった、黒色の帽子とダウンを身につけた男を指差していた、「あいつがさっき、わしとかみさんを眠らせたんじゃ!」お爺さんはそう言い放つと、黒色の帽子をかぶった男は動揺を隠せない様子を見せた、「フッ、一体何の話をしているんだあんたは!、俺はなにもしていないぞぉ!」そう若い男はお爺さんに突きつけた、「わしを信じてくれ、さっき君がトイレへと行っている間に、あの男がわしらを何か道具を使って眠らせんたんじゃ、わしはこっそり見ていたぞ」お爺さんは熱くなり、席から廊下に出て吾妻の方へと駆け寄ってきた、「おい!訳のわからない爺さんを信じるのか、あんたは!」 すると吾妻は睨み付けながらゆっくりと黒色の帽子をかぶる男に近付いていった、「お前の正体を暴きたい、携帯を貸してくれ?」そう言うと吾妻は手を差し出した、男は静かに吾妻の方を見つめながら頷くと、シートの席に置いていたリュックを取り出した、「ここじゃ狭い、廊下に出ても」そう言いながら男はリュックを片手で持ちシートから抜け出したその瞬間、男は吾妻の方に向けてリュックを投げつけ、その隙に、5号車の扉の方へと逃げ出した、「待たんか!」逃げ出す際に吾妻の後ろにいた爺さんは、逃げ出す男の背中を握ったものの、爺さんの力及ばず逃がしてしまった、「止まれぇ-!」吾妻はリュックを誰もいない方へ投げ出すと、男が見知らぬ相手であるのか、正体を確かめる為5号車へと追いかけていった。
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