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「チクタク、チクタク、」時間が刻々と削られて行く、ふと腕時計を確認すると、発射時間はあと一時間までに迫っていた、吾妻は購入した東京行きの切符を使い古した財布の中へ閉まうと、床に置いていたボストンバッグを手に取り駅のホームへと歩きだした、午前中の新函館北斗駅内は多くの人々でごった返している、人集りの間をすり抜けながら足早に歩いていった、そんな時、不審に人々が間を開ける謎の空間を見つけた、吾妻は謎の空間に疑問を抱き、その場を振り向いてみると、駅の改札口から多くの警官達とマスコミが歩いてくるのが見えた、改札口はマスコミがシャッターを切る音が鳴り響き、刑事を達がマスコミを必死に抑えようとする、騒がしい現場となった、その光景を吾妻は険しい目付きをして見つめながら、そのままホームへと歩き続けた、「カシャカシャ!カシャカシャ!」 「すいません!危ないので避けてください!」 警視庁特別警護班に配属された刑事の葛城は、前を封鎖するマスコミ達の抑えつけに苦労していた、「危ないですので避けてください!」 葛城の他三人の刑事達は協力して群がるマスコミ達を押し込むと、やがて隙間が開き、空いた先へ一気に警官達は突破していった、「ちょっと話聞かせてくれよ!、今までどこにいたんですかね!蛭間ぁぁ」 警官達がマスコミ達の包囲を突破する際、その時葛城は目の前を通りすぎる蛭間の姿が目に映った、蛭間は通りすぎる際一度葛城の目を見つめながら、そのまま警官達に連行されていった、その瞬間、どこか身の毛のよだつ寒気を感じてしまった、「葛城、何してる?早く行くぞ、」 突然後ろから、葛城の様子の異変を感じた、班長の清原が声をかけてきた、「すいません、すぐ行きます!」 その時、追いかけようとする葛城の腕を何者かが握ってきた、慌てて後ろを振り向くと、腕を握ってきたのは先程蛭間に向けて積極的に追求していた、紺色のハンチング帽を被る記者の男だった、「警察に何をしているんですか?」
葛城は睨みつけるような目で、その記者を見つめた、「まぁ、そんな怒った顔見せるなよ、お互いこれが仕事なんだからよ、、」記者の男はそう呟きながら葛城の襟元をポンポンと叩いた、「申し訳ありませんが我々は急いでいるので」 そう言い放ち葛城はその記者から去った、「どうして今まで逮捕出来なかったのか教えてくれよ、刑事さん!」 立ち去る時でも、嫌みな追求をしてくる記者の降るまいに葛城は苛つきながら清原を追いかけた。
五分後、東京行き新幹線、はやぶさのホームへと吾妻は立っていた、新幹線が来る間、吾妻は一度持っていたボストンバッグを地面に置くと、近くの自販機へと向かった、自販機の前へと来ると、缶コーヒー値段を確認し小銭を入れてボタンを押そうとしたその時、幼い少女が自販機の近くで何故かこちらを見つめていた、吾妻は少し動揺しながら、こちらを見つめる少女に、姿勢を低くし優しい声で問いかけた、「おじさんに、何かようかな?」 しかし少女は恥ずかしながら応えず、自販機の方を振り向いた、吾妻は少女の目線の先を振り向くと、立ち上がって、先ほど入れた小銭を使ってジュースを購入した、「ガシャン!」取り出し口にペットボトルのジュースが落ちると、吾妻は優しい表情でそのジュースを少女に手渡した、すると、さっきまで恥ずかしがっていた少女は、嬉しそうな様子で吾妻に可愛い声でお礼の言葉をかけてきた、吾妻は思わず頬が緩んだその時、少女の母親だと思われる女性が慌ててこちらに駆け寄ってきた、「申し訳ありません、うちの娘が迷惑をかけてしまいまして」少女の母親は、低い姿勢で吾妻に頭を下げてきた、「いえいえ、私は何の問題もありませんので、顔をあげてください」 そう応えると、再び母親は頭を下げてお礼を言いながら、少女を連れて去っていった、吾妻の元へ去り行く際、少女は吾妻の方を見ながら母親に連れていかれて行った、その少女の表情に吾妻はふと昔の事を思い出し、思わず笑みが溢れてきた、そんな時、ホームから駅員のアナウンスが流れ始めた、「まもなく東京行きのはやぶさが到着致します。黄色線までお下がりください。」吾妻は急いでボストンバッグが置いてある場所へと向かった
新幹線はやぶさが到着すると、特別警護班、北海道県警の刑事達数人づつが、パーカーに身を隠した蛭間を連れて一般人を封鎖する2号車へと乗り込んでいった、「後はよろしくお願いいたします、」北海道県警のお偉い方は、清原達に全てを託し、敬礼を向けた、「必ず、刑務所へと移送させます、この男に裁きをかける為に」清原は強い口調でそう話し、北海道県警の警官達に向けて敬礼を返した、やがて2号車の扉が閉まると、清原は機長に状況を説明するため一号車の方へと歩いていった、その間、例の蛭間は、清原と同じく特別警護班の葛城、山崎、小鳥遊、そして残る警視庁の神室警部他、数人の刑事達が蛭間を監視し、2号車の席へと座らせると、一号車、三号車へと三人づつ別れていった、「東京までは、役8時間だ、全員時計を合わせておけ」神室は、回りにいる刑事達にそう合図すると、全員が身に付ける腕時計をセットした、そして窓の外を眺める蛭間は不吉な笑みを浮かべ続けていた。
その頃、6号車では、吾妻は切符に記載されている番号を確認しながら自身の席を探していた、すると、「あー、あー、わかっている。今日中にはそっちに着くと思うから。」突然吾妻の後ろからスーツを着た会社員の男が割って入ってきた、吾妻は思わず近くの席へと倒れてしまった、「大丈夫ですか?」そう話かけてきたのは、吾妻と同じ年代くらいの女性であった、「えぇ、大丈夫です」吾妻はそう応えると、その席から二列後ろにある自身の席へと座り込んだ、続々と乗客が入ってくるなか吾妻は、ふと足元に置いてあるボストンバッグの中身を確認し始めた、チャックを開き、中を覗くと、そこには一つの拳銃が閉まわれていた。
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