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12話
リューネはイサギと共に彼の自室へ移動した。
手を繋ぎながらだが。
あまりの仲の良さにリチャードや使用人たちは苦笑しながら見送った。
両親のタウロスとイリーナ、兄二人も困ったように笑いながら生温かい視線で眺めている。一人だけ、リゼッタはにやりと笑っていた。
やるじゃない、兄さんとか思っていたのであった。
「…リューネ、帰って来て早々、悪いけど。僕もいろいろ溜まっていてね。もしよかったら、一緒に寝ようか?」
「えっ!けど、婚約してまだ二ヵ月も経っていないのに。いいんですか?」
「大丈夫。入浴や着替えの時は覗いたりはしないから。ただ、添い寝するだけでいいよ」リューネは添い寝だけと言われても疑いをぬぐい去れない。一応、イサギとて二十歳の成人男性だ。いくら、女性に興味がないといっても手を出してこない可能性は低い。別室で休ませてほしいと言おうとしたが。
イサギは片目を瞑ってウインクをした。
「僕もまだ、結婚もしていないのに。手を出すような真似はしないよ。でも、そうだね。リューネ、先に湯浴みをしてきてくれるかな。僕は後でいいから」
「…わかりました。じゃあ、先に入ってきます」
「うん。そうしてくれないかな。夕食はこの応接間で一緒に摂ろう」
イサギは優しく笑いながら、リューネの頭を撫でてきた。いきなりだったので驚きはしたが。
そのまま、浴室に行ったのであった。
この時、イサギは悪戯っぽく笑っていたのだが。リューネは気が付いていなかった。
リューネは浴室で手早く髪をほどき、ドレスを脱いだ。だが、下に着ているドロワーズなどは脱ぐことができたけども。コルセットをうまくはずすことができないでいた。
悪戦苦闘したが、なかなかできない。
仕方なく、イサギに頼んで侍女を呼んでもらおうと考えた。
浴室と部屋を隔てる扉を少しだけ開くと、リューネは呼びかけた。
「あの、イサギ様。ちょっと、いいですか?」
寝室のベッドの端に腰掛けていたイサギは浴室の扉が開いているのに気が付いたらしい。すぐに、こちらへとやってきた。
「…リューネ、どうしたんだい?」
「その。コルセットがうまくはずせなくて。侍女さんを呼んでいただけますか?」
簡潔に言うとイサギは少し目を見開いた。
「…コルセットが?侍女を呼ぶのはいいけど。僕の部屋の周りには今は人がいないんだ。侍女を呼ぼうにも時間がかかるよ」
「…そうですか。わかりました。コルセットは自分ではずします」
リューネはあきらめて扉を閉じようとした。
けど、それをイサギが止めた。
「リューネ、待って。もしよかったら、コルセットは僕がはずすよ。まあ、君の肌は見ないようにするから」
「…それはいいです。そんなことされたら、あたしの身がもちません」
「けど、コルセットをはずせなかったら、湯浴みはできないよ。ここは僕の言うとおりにして」
リューネは顔を真っ赤にしながら、扉を閉めようとした。
だが、イサギは体を割り込ませて強引に脱衣場に入ってきた。
「イサギ様!?」
脱衣場に入ったイサギはリューネの前に立ちふさがった。
そして、彼女の肩を掴むと耳元にささやいた。
「…コルセットをはずすだけだから。じっとしていて」
そう言いながら、コルセットの背中側の紐を器用にほどき始めた。イサギの手や指が背中をかすめる。
そのたびにリューネはその部分が熱くなるのを感じた。声を出さないように我慢しながら、なすがままにされていた。
イサギはコルセットの紐を全部ほどき終えるとそれを緩めて、はずしてやった。すると、ほんの一瞬だったがリューネの白くまろやかな胸が視界に入る。イサギはむき出しになった鎖骨や華奢な肩などを食い入るように見つめてしまう。
「…あ、あんまり見ないでください。湯浴みをしてきますから!」
慌てて、胸を隠しながら、リューネはイサギから離れようとする。
だが、イサギはリューネの手首を掴んでいた。そのまま、強い力でガーターベルトや肌着だけを身に付けたリューネを引き寄せて、腕の中に閉じこめていた。
抵抗したがより強い力で抱きしめられる。
イサギの思わぬ力の強さに戸惑うリューネだった。
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