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13話
イサギはほぼ裸の状態のリューネを抱きしめながら、自分の欲情を持て余していた。
心臓が早鐘を打つように鳴っている。
リューネの体は少しでも力を入れたら折れてしまいそうなほどに細くて華奢だ。そして、甘い薔薇に似た香りがする。
頭がくらくらとなりそうで離れようとしたが。顔を赤らめながら、目を閉じて身を任せている彼女を見て、辛うじてあったわずかな理性もどこかへ吹っ飛んでしまった。
気が付けば、リューネの柔らかな唇にキスをしていた。
リューネはいきなりのキスに戸惑っていた。イサギは浅いものから始めて、徐ヶに深いものに変えていく。
最初は唇を堅く閉じていたが長い間され続けていると息が苦しくなってくる。少しだけ開こうとしたら、そこに熱くぬるりとした物が入り込んできた。
「…んんっ?!」
声を出してイサギの胸を叩いたが彼はおかまいなしに続ける。次第にそれが彼の舌だと気づいたリューネは離れようとした。
だが、後頭部をがっちりと掴まれているから、逃げられない。
舌はリューネの歯列をなぞると強く吸い上げてきた。
その時に背筋に痺れるような感覚が走った。イサギは口内を蹂躙しながら、リューネのうなじや背中をすうとなで上げた。
脱衣場にはイサギとリューネの息づかいと淫靡な音だけが響いていた。
その後、胸にまで至るところでリューネが音を上げた。
「…イサギ様。待って!まだ、湯浴みをすませていません」
それを言ったら、イサギの動きはぴたりと止まる。
「…リューネ。良いところだったのに」
恨めしそうに見ながらイサギはリューネからゆっくりと離れた。
「あたしを抱きたいんだったら、せめて正式に婚姻するまで待ってください。こちらにも心の準備がありますから」
きっぱりと言い放つとイサギはうなだれた。
「…はあ。わかったよ。じゃあ、初夜までは待つことにする」
ため息をつきながら、名残惜しげに脱衣場から出て行ったのであった。
その後、リューネが湯浴みをすませるとイサギは先に休んでいてほしいと言いながら、浴室へと入っていった。彼女はナイトドレスに着替えていたのでそのまま、寝室に行き、ベッドに潜り込んだ。
(はあ、さっきは驚いた。コルセットをはずしていただいたのは良いけど。まさか、キスをされるとは思わなかったわ)
裸も見られてしまったし。
また、顔や体が熱くなる。恥ずかしくて仕方がない。
リューネはシーツを上げるとその中にくるまった。
イサギが湯浴みをすませてくるまでは眠れそうにない。そう思いながらも瞼を閉じた。
髪はまだ濡れていたがそれはどうでもよかった。ただ、体が疼くようで仕方がない。
どうにかしてほしかったが我慢して眠りについたのであった。
翌日、リューネはまだ薄暗い時間に目が覚めた。だが、体が自由に動かない。
背中には温もりと重みがかかっていて、腰の辺りには何かが巻き付いていた。
首は辛うじて動いたので後ろを振り返ってみる。
そこには淡い金色のさらさらした髪と長い睫毛に縁取られて閉じられた瞳があった。端正すぎる綺麗な顔が間近にあり、リューネは驚きのあまり固まった。
そして、腰に巻き付いているのがイサギの腕だと言うことに気が付いた時には悲鳴をあげそうになる。だが、それは何とか我慢した。
必死に体をよじって腕の中から抜け出そうとしたが。それはよけいに強まった力によって阻止された。リューネはあきらめてイサギが起きるのを待つことにしたのであった。
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