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16話
リューネが寝室に入ろうとするとイサギも同じようにしてきた。
後ろ手に扉の鍵も閉めてだが。かちりと音がしたのにはリューネは気づかない。その間に彼女はベッドに上がり、シーツにくるまる。
イサギはそれを見るとネクタイを緩めてほどいた。そして、はずすと同じように背広も脱いだ。
シャツのボタンを二つほどはずしながら、ベッドの中にいるリューネに近づいた。
「…リューネ。入るよ」
低い声でささやきながら、ベッドに上がる。
びくりとこちらに背を向けているリューネの体が震えた。
イサギは情欲を秘めた笑みを浮かべたのであった。
ベッドの中に入り、イサギはリューネの事をシーツごと後ろから抱きしめた。
「…やっぱり、君は可愛いね。僕も今までは何かと女性を避けていたけど。君だけは別みたいだ」
「…か、可愛いですか?」
リューネが問い返すとイサギは頷いた。
「うん。妹よりは可愛いと思うよ。リゼッタは幼い頃から気が強くてね。だから、あまりかわいげがなかったというか…」
「それを言うと、リゼッタ様に怒られますよ」
「いいんだよ。僕の趣味を何かというと馬鹿にしてたから。わかってくれていたのはリチャードや母上たちくらいだったしね。君も本当は可愛いものが好きなのは変だと思っているかい?」
「…ちょっと、思っていました。けど、お話していく内にイサギ様って意外と普通な所もあるんだなと気が付いて」
その後は言いにくそうに濁してしまう。イサギは促そうとはせずにリューネの事をさらに強く抱きしめた。
「…そうか。変だとは思っていたんだね。まあ、気にはしていないよ。慣れているから」
ため息をつきながらイサギは言った。
リューネは気にはしていないと口ではいっていても彼が少なからず傷ついているのを感じ取っていた。イサギの男性にしては華奢な手をぎゅっと握りしめる。
「…あの、ごめんなさい。変だとか思われていたらやっぱり、嫌ですよね。あたし、どうかしていました」
「いいんだよ、謝らなくて。でも、そうだな。代わりにと言っては何だけど。キスしても良いかな?」
「…え。どうしてですか?」
リューネがきょとんとしていたら、イサギはいっそ爽やかなといえる笑みを浮かべた。
「君に対しての罰といったところかな。キスと少し先の事をさせてくれたら、許すというのでいいと思うんだが」
「……わかりました。言うことを聞きます」
リューネは熱くなった体を持て余しながらも頷いた。
イサギはリューネを自分のほうに向かせると軽く額にキスをした。そして、瞼や頬にもすると彼女の赤茶色の瞳をまっすぐに見つめる。
「…リューネ」
掠れた声で呼びながらリューネの上にのしかかった。唇に軽くキスをしながら、髪を手で梳かした。
「イサギ様。何をするんですか?」
「…ん。昨日の続きをと思っているけど」
さらりと答えられてリューネは一気に焦りだした。
驚いている間にイサギは少し深めのキスをしてきた。
「…ええっ。ちょっと、待ってください!」
「ごめん。待てない」
謝りながら、より深く濃いキスをしてきたイサギだった。
キスをしながら、ナイトドレスを下から少しずつまくり上げたイサギはリューネの足首から膝までをすっと撫であげた。それだけでリューネは未知の感覚がするのを不可思議に思う。イサギはリューネが少し開けた唇の隙間から、舌をするりと割り込ませる。
そして、歯列をそっとなぞり上げた。
「ふぅ、ん」
鼻から抜けるような声に気をよくしたのであった。
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