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2話
リューネは今年で十六歳になる。
背はまずまずあるが、全体的にほっそりとしていて、女性的な体つきには未だになりきれていない。胸も普通であった。唯一自慢できるのは、淡い赤茶色の髪と澄んだ青い色の瞳の可愛らしい顔立ちだった。
赤茶色の髪は柔らかな癖毛で瞳も透明感があるといってよく、外見はまるで荒野に住む野うさぎに似ている。リューネの両親は細々と家具屋をやっていた。
彼女には背丈が小柄で華奢な体つきの顔もそっくりな姉がいる。名をリンカといい、おとなしく引っ込み思案な性格をしていた。
反対にリューネは明るくおおらかで活発な性格であった。
ちなみに、弟も一人いて名をシュウといい、性格は穏やかで控えめな少年である。
リンカは十九歳でシュウは十四歳になっていた。
「…リューネ、大変よ。この町でも有名な地主の次男坊があんたと見合いをしたいといってきてね」
母が店の仕事を放り出して、リューネに駆け寄ってきた。
奥で姉のリンカと昼食の用意をしていた。彼女は同じ髪色と瞳をしているリンカたと顔を見合わせた。
「母さん、どうしたの。そんなに慌てて」
「…慌てたりもするよ。だって、あの変わり者で有名なイサギ様がリューネとの見合いを申し込んできたんだから」
昼食を作る手は止めてリューネは母に近づいた。
「地主様の次男坊のイサギ様といえば、可愛らしい物が大好きなことで有名だけど。何で、そんな方があたしと見合いをする必要があるの?」
「…聞いた話によると、このお見合いを打診したのはイサギ様の妹のリゼッタ様らしいんだよ。ご両親も認めたらしいからね」
「そう。あたしは断りたいところだけど。地主の息子さんとなったら、困ったわね」
ふうとため息をついた。母のイザベルはうなだれる。
「そうなんだよ。まさか、リンカに頼む訳にもいかないし。まあ、イサギ様が断りを入れてくれれば、その方がいいんだけど」
「あたしごときがイサギ様に気に入られることはないと思うわ。会った後で断られるのがせいぜいだろうし」
苦笑いしながら、リューネは答える。
母のイザベルも頭を抱え込んでしまう。仕方なく、二人は弟のシュウや父にも話して相談することにした。
「…リューネがイサギ様と見合い?何かの間違いなのでは?」
父のアサギは困惑気味にそういった。
イザベルはいいえと首を横に振る。
「間違いなんかじゃないよ。お見合いの日は今日から、一週間後らしくて。その日までに肌や髪の手入れをしておくようにと香油やお化粧水に白粉なんかも贈られてきたんだ」
イザベルがまくし立てるとアサギは驚きのあまり、目を見開いた。
「それは本当か?!」
「本当ですよ。私たちも混乱していて」
イザベルとアサギ、リューネなどの兄弟たちも頭を抱えて困惑していたのであった。
その後、リンカとイザベルに手伝われながら、風呂で念入りに髪や肌の手入れをしたリューネだった。
髪に薔薇の香油を塗り、肌にもクリームを擦り込んだ。
リンカはうらやましく思いながらも妹の為と気持ちを切り替える。
「…この香油、良い匂いね。リューネ、私たちで綺麗にしてあげるから」
「母さん、自分でしなきゃいけないのに。ごめんなさい」
「いいんだよ。気にしなくて」
申し訳なく思いながらもされるがままになっていた。
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