19人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
29話
イサギはゆっくりと腰を進めた。
リューネは引き裂かれるような痛みによけいに眉をしかめた。イサギはそんな彼女の額や頬に軽くキスをする。
気を紛らわそうとする彼なりの気遣いだった。額に汗を浮かべつつもリューネはイサギの首に腕を回す。
「…イサギ様」
名を呼ぶとイサギは強く抱きしめてきた。リューネは密着度が高くなったのに驚く。
「…リューネ。名を呼んでくれるのは嬉しいけど。煽られるから、控えてほしい」
何の事やらわからなかったが。中のイサギの分身がより、硬さを増したような気がして頷いておいた。
「わ、わかりました」
「ごめん。僕もそんなに余裕がないんだ。少し動くよ」
言われて直後にイサギの動きが速まり、リューネは痛さに呻きながらも何とか、彼の激情を受け止めた。
精を中で出されてさすがに不安になる。イサギは分身を引き抜くと立ち上がり、シーツでリューネの太腿などを簡単に拭いてくれた。
そして、タオルなどを持ってくると言って浴室に行ってしまう。少し経って戻ってきた彼の手には洗面器とタオルが持たれていた。
洗面器の中には水が張ってあり、リューネは何をするのだろうと不思議に思った。イサギはベットのサイドテーブルの上に洗面器を置くとタオルを水に浸して固く絞った。
水で濡らしたタオルを持ってリューネに近づいた。
「…リューネ。入浴をしてもいいんだけど。それには侍女を呼ばないといけないから。まだ、夜中だしね。水で拭くだけで今は我慢してくれ」
そうことわってから、イサギはリューネの足の爪先から優しく拭き始めた。膝や太腿などを拭いてから、秘所を念入りにしてくれる。
そこを拭くと赤いものがタオルについていた。リューネはそれが破瓜の血だと気がついた。
「…あ、あの。イサギ様。自分でできます」
顔を赤らめながら言ったが。イサギはゆっくりと顔を横に振った。
「…それはだめだ。君、体も満足に動かせないはずだよ。僕がやるから、おとなしくしてなさい」
きっぱりと言われてリューネは黙ってされるがままになるしかなかった。
イサギはタオルを軽く洗うとまた絞って体を丁寧に拭いていく。腹や胸、首筋などもやると体を裏返した。
背中やうなじなども拭き終えると仰向けにしてくれる。頭以外の場所を全部、拭いてしまうとイサギは立ち上がった。
リューネは恥ずかしさのあまり、顔に熱が集まるのを感じた。男の人にここまで甲斐甲斐しく世話をされた事がないために身の置き所がないというか。
しばらくして、イサギが戻ってきた。ズボンだけを履いている状態でベットに上がってくる。
裸のリューネにネグリジェを手渡してきた。それを着たらいいと言ったので有難く身に纏うことにした。
立ち上がって着ようとしたが。足がぷるぷると震えてうまくいかない。
とてもではないが立てなかった。イサギは苦笑しながら、ごめんと謝ってくる。
イサギがネグリジェの肩の部分を持って頭からスッポリと被せるようにしてくれた。
リューネは襟元の開いた部分から顔を出すと袖に腕を通した。イサギはリューネの両脇の下に手を添えると背中に腕を回して上半身を肩の辺りに凭れさせかける。
ネグリジェの裾を片手で足首まで引っ張って下ろしてくれた。
「…ありがとうございます」
「…礼はいいよ。痛い思いをさせたし。これくらいはさせてほしい」
耳元で囁いてから、イサギはリューネを離した。そっと、彼女をベットに寝かせると自分も寝転がる。
シーツは汚れているが仕方がない。我慢しようと決めて二人して、瞼を閉じて眠りについたのであった。
翌朝、リューネはまだ足腰が立たず、入浴の準備をしてくれた侍女たちに生温かい目で見られていた。イサギはすこぶる元気でリューネを横抱きにして浴室に連れて行った。
その後、頭や体の隅々を念入りに洗われてリューネはよけいに羞恥心に悶えた。
「…リューネ。そんな照れた顔されたら、またしたくなる。とりあえず、もう上がろうか」
「…そ、そうしてください」
そんなやりとりをしながら、二人して浴室から出た。侍女たちは顔を赤らめながらもリューネに部屋着用のワンピースを着せる。髪をタオルで丁寧に拭いてブラシで梳いた。
上半分をハーフアップにして纏めて下は流したままにする。銀製のバレッタを付けて髪の結い上げは完了した。
その間にイサギも着替えを済ませてリューネを待った。準備ができると侍女たちから、朝食はどうするかと聞かれる。
「そうだな。じゃあ、ここで食べるから。軽いものを持ってきてくれ」
「…わかりました。では、お嬢様が食べやすいようにサンドイッチや野菜スープなどをお持ちします」
「…ああ。あっさりとしたものを頼む」
侍女たちはでは、一旦失礼しますと言って部屋を出て行った。
しばたくして、ワゴンを押して侍女たちが戻ってくる。部屋の中央に置いてあるテーブルの上にトマトやレタス、料理人お手製のマヨネーズで味付けされたサンドイッチや野菜スープ、オムレツにデザートのフルーツのオレンジなどが入った皿が所狭しと並べられた。
イサギは手ずから、取り皿にサンドイッチやオムレツを載せるとフォークで取り分けてリューネの元にまで持ってきた。
「…リューネ。今の状態だとテーブルにまで行けないだろう。ベットまで持ってくるから、食べてくれないか」
「…そ、そうですね。お願いします」
そう言うとイサギはリューネの膝の上に皿を置いてくれた。おずおずとサンドイッチを口に運んだリューネだった。
最初のコメントを投稿しよう!