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素晴らしい朝
俺は弁当をリュックに入れた。
「今朝も早いわね」
「小テストあるから。予習する」
「真面目ねぇ」
良い香りがただよう。母さんが鼻歌まじりにドリップコーヒーを淹れている。
テレビは流行りのスイーツを紹介している。その横にはパキラ。白いカーテンが揺れる。母さんがいる朝のリビングは爽やかだ。
今日は早くから起きて俺の弁当と朝食を準備してくれた。疲れているはずなのにニコニコしている。
「今日は夜勤だっけ」
「うん、準夜勤だから夕方から。なんか作っとくよ」
「いいよ、自分でなんとかする」
玄関まで母さんが見送りに来てくれた。
スニーカーを履きながら、横の靴を見る。くたびれた黒の革靴。
帰ってたんだな、と思う。
この靴の主は、神経質そうなおっさん。たぶん今は二階で寝ている。
クソつまんなそうな顔をしているし、口数は少ない。でも同居し始めて1カ月、母さんの機嫌がすこぶるいい。ので、俺は面白くない。けど顔には出さない。
「じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
笑顔で手を振った。
それが母さんと交わした、最後の会話になった。
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