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これからのこと
「今後のことなんだが……実は君のお祖父さんから昨日連絡が来た。君を引き取とろうかと言っている」
「おじいさん?」
「その……父方の」
かなり言いにくそうに誠司さんは目をそらす。
なにか話があるとは思っていたけど、まさか祖父の話が出るとは思っていなかった。
「君さえよければ、近いうちに一度来ないかと言っている」
顔を思い出そうとして、やめた。うちの親は駆け落ちして結婚した。祖父母と会った記憶はない。
「誠司さんはどう思ってるんですか」
目の前の大人は、さっきよりしゃべりにくそうに言葉を絞り出した。
「俺は、武春君がしたいようにすればいいんじゃないかと思う。君の人生だ」
「それで、誠司さんは独身に戻りたいんですか」
「いや、そういう意味では……」
スマホが鳴って、会話は途切れた。
誠司さんは廊下へと話をしにいく。俺はその間台所のドリップコーヒーを見ていた。スーパーで買ってきた安物、10袋入りが開けられて残りが所在なげにしている。
ようやく戻ってきた誠司さんは「急がなくていいから、どうするか決めたら教えてくれないか」と言った。俺は頷いて席を立つ。
自分の部屋に戻ってしばらくして、スマホが振動した。
誠司さんから、祖父の連絡先が送られてきていた。
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