5人が本棚に入れています
本棚に追加
あの日の弟子の来訪(一)
それからまた、同じくらいの年月が流れた頃、今度は晴道がやってきた。
彼は一人ではなかった。小さな少年が隣にいて、弟子の玉瀬だと紹介してくる。今年で十才になったというが、小柄で屈託ない笑顔を向けてくる様子は、年より幼く見えた。
立派な青年になった晴道は、随分しっかりした言動を身につけており、利明としては感慨深い。
そうしみじみ思っていると、不意に、玉瀬が晴道の袖をめくり上げた。
「あの、白津さん? 実は、師匠、怪我をしてるんです」
さらされた腕には、確かに布切れが巻いてある。
最初のコメントを投稿しよう!