あの日の弟子の来訪(一)

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あの日の弟子の来訪(一)

 それからまた、同じくらいの年月が流れた頃、今度は晴道がやってきた。  彼は一人ではなかった。小さな少年が隣にいて、弟子の玉瀬(たませ)だと紹介してくる。今年で十才になったというが、小柄で屈託ない笑顔を向けてくる様子は、年より幼く見えた。  立派な青年になった晴道は、随分しっかりした言動を身につけており、利明としては感慨深い。  そうしみじみ思っていると、不意に、玉瀬が晴道の袖をめくり上げた。 「あの、白津さん? 実は、師匠、怪我をしてるんです」  さらされた腕には、確かに布切れが巻いてある。
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