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あの日の弟子の来訪(二)
「さっき依頼をこなしてきたんですが、その時、僕がへまをして」
庇った晴道が負傷したらしい。本気で案じる少年を尻目に、晴道は苦笑した。
「もうお前が手当て済みじゃないか。大したことなかっただろう?」
「子どもみたいに嫌がるから、ただ布を巻かせてもらっただけです。浅い傷でも、雑にしてると後から怖いことになりますよ」
利明は彼らのやり取りを見て、ちょっと目を丸くした。
なるほど、見目に反してしっかりした子だ。ここだけを聞いていると、まるで立場が逆なのが可笑しい。
「晴道君。弟子を心配させたままじゃ、いけないよ。どれ。私が診てあげよう」
そう言うと、渋々な晴道にお構いなく、さっさと傷の具合を確かめて処置をしていった。
これで大丈夫、と請け合うと、玉瀬もほっとしたようだ。
それから、しばし言葉を交わした後、二人は鳥居をくぐって去っていった。またいずれ、と笑顔を残して。
絆は代々と結ばれていく。
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