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遭遇(一)
***
それは、二十年以上も前のことである。
当時二十二才、まだまだ若さ弾ける青年だった利明が、禰宜になったばかりの頃だ。涼しい面立ちをしている彼は、微笑めばそれなりに美しい。だが、如何せん少年の心をもったままなので、その挙動には悪戯っぽさがついて回った。
ある日、使いに出ていた利明は、帰る途中で、不穏な気配を感じ取って眉を潜めた。一帯は拓けた畦道だ。身を隠す場所もない。
(引き返すかな)
遠回りになろうとも、違う道を行ったほうが良いだろうか。束の間、逡巡したのがいけなかった。
気づけば、得体の知れない何者かが、向こうから迫ってきたのだ。利明はますます苦い顔をする。
(あれは、本来、現世に生きる者ではないな)
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