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男と少年(二)
結局、少年の宣言どおり、異形は防戦一方を強いられる形となった。
幾らかして、暗誦を終えた男が顔を上げる。ゆったりとした動きに思えたが、その実、刹那で事は終わった。
男が何をしたのか、利明にはさっぱり見えなかったものの、一拍後には異形は消し去られていた。
なんとも鮮やかで、潔い戦法だ。ああいった手合いと戦い慣れているのだろう。
知らず震えたのは、彼らに畏れを感じたから……否、それだけではなかった。
利明がはっと振り返ったのと、少年が駆け寄ってきたのは、ほぼ同時だった。
少年にぐいっと腕を引かれて後退ると、すぐそこに、そっくりな見目の異形が、新たに現れたではないか。気づけば少し離れた所にも他二体、目の前の者と合わせると計三体が間合いを詰めてきている。
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