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「それはそうと、久米ちゃんにお願いがあってね?」
「はい?どうしたんですか」
こてんと首を傾げると、有無を言わさない鉄壁の笑顔を貼り付けて。
「合コン、行こ!」
「ご、……合コン?」
片手に作った拳を顔の横に掲げた灰原さんは、バラエティー番組のタイトルコールさながらのテンション。
「メンバーは、真部アナと報道の綾瀬、あとはADの真希ちゃんも来てくれてるみたいで〜。ほら、気軽に女子会行く感覚で。ね?ね??」
キョトンと目を丸める私の肩をガシッと掴んだ彼女は、獲物を逃すまいと補足情報を羅列する。
【合コン】って、碧央くんが聞いたら発狂しそうなワード。もちろん、私の中に選択肢は一つしかなく、「灰原さん、すみません」と断ろうとしたのだけれど。
「ストップ、久米ちゃん」
「ふがっ、」
「待って、断るのはまだ早い!」
言葉を遮るように私の口を塞いだ灰原さんは、血走った瞳で私の顔を覗き込み、「これを聞いたら絶対に行く気になるから!」と自身がこれから告げる補足情報のハードルを上げていく。
そんなこと言われても……、私には行くって選択肢ないのになぁ。
「今回の合コン相手、すごいメンバーセッティングできそうなの!久米ちゃんも来るって言ったら、相手もノリ気で」
「はぁ、」
「その相手っていうのがなんと、……——」
「……灰原ぁ、何の話してんのかなぁ?」
突如、背後から聞こえた低い声に肩を跳ね上げて、ぎゃあと悲鳴をあげた灰原さん。
その拍子に肩に回されていた腕が外れたので、私もゆっくり振り返れば……
「まったく、油断も隙もないな。俺の可愛い弟子いじめないでくれる?」
「朝賀さん!」
「久米もはっきりパワハラだって言っていいんだよ?」
ナレーション撮りを終えたらしい碧央くんが呆れた顔で私と灰原さんを見下ろしていた。
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