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「碧央くん、心配しなくても合コンなんて行かないよ?」
「……本当に〜?」
「に、睨まないでよ……」
頬杖をついたまま、じとーっと疑わし気な瞳を向ける碧央くんに「もう、私のこと信じられない?」と、こういう場面でお決まりのセリフで返してみたが……
「波音を信じていないんじゃない。世の中の男どもと、波音の周りの押しの強い女どもを信じていないだけ」
「……」
一切揺らぐことなく真顔で堂々と告げた彼に呆れてしまう。まったく、生きづらい人だなぁ……と。
これはさらにいじけて事態が悪化しないうちに手を打たねばならない。極限までいじけた碧央くんは手に負えないほど面倒臭いのだ。
「碧央くん、碧央くん、ちょっとあっち行こう?」
「……あっち?」
デスクの下でクイクイっとジャケットの袖を引っ張って、小声でお誘いしたのは執務室の端にあるカフェスペース。
いくつかの部屋に仕切られており、談話室としても使われる場所だからある程度のプライベートが保たれる。
「は、はおちゃん、こんな人目につかない場所に連れてきて何を……」
「な、何もしないよ!やだ、変な期待しないでね?!」
ソワソワと目を逸らして頬を赤らめる碧央くんに慌てて否定すると、「何もしないの……?」と子犬が餌をねだるような瞳で見つめられた。
NKMのエースアナ。本当にこの人で大丈夫だろうか。
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