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「デスクでいつまでも話してたら誰に聞かれるか分からないでしょ?」
「大丈夫でしょ。アナウンス室なんて本番の合間の休憩ルームに等しいんだから」
「そうかもだけど!いつ戻ってくるか分からないし……」
アナウンサー室は60名もの社員のデスクが鮨詰めにされている大所帯だ。それぞれ出勤時間も勤務時間も異なるため、常に人は疎なのだが、全く無人というわけでもない。
幸い、私と碧央くんのデスクの周辺は出払っていたため個人的な会話を聞かれることはなかったが、いつ帰ってくるとも分からない。
とりあえず、これ以上下の名前で呼び合うような会話を続けるのであれば、場所を変えるのが得策だと思って場所を移動したのだ。
「ふふ、はおちゃんは心配性だね?」
「……碧央くんに心配性って言われたくないなぁ」
私以外の人間を全て疑うほど“心配性”なくせに。
そんな心配性な彼氏を持つと私も大変なわけだが、……まあ、それは想いの強さにも比例するということで、実は満更でもない。
「碧央くん、私、お付き合いしてる人がいるのに出会いの場に行くほど軽い人間じゃないよ?」
「それは分かってるけど周りが……」
「ほーら、碧央くんだって心配性。
でも安心して?周りの人にどう誘われてもちゃんと断るから!」
「……」
まだ心配そうな碧央くんを丸め込むためにニッコリと笑顔を保ったまま、彼の大きな手を両手で掬う。
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