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「久米さん、先日はどうも」
「……あ」
灰原さんに誘導されるがまま男性陣に目を向けるとニコッと笑って声をかけてきた一人の男性。
ガッチリとしたその体型に見覚えがある私は慌てて「こちらこそ、ありがとうございました」と頭を下げた。
続け様に「また会えて嬉しいな」と笑顔を向けてくるのは、先日球場でインタビューをさせていただいたプロ野球選手の清貫さん。
……私が最近、スポーツニュースのVTRに映っていても、あまり見ないようにしているその人だ。
何故そんなに失礼なことをしているかといえば、もちろんご本人のせいではない。球界を代表するスラッガーとして、日本中の野球ファンに元気を与えていて大変結構なことだと思っている。
……でも。
(この人のせいであの日、碧央くんが暴走しちゃって大変だったんだもん)
あの日とは、彼へのインタビューVTRが『あさがお』で放送された“あの日”だ。
彼と私のやりとりに酷く嫉妬した碧央くんは、あの日執拗に私を愛した。
それはもう……翌日の『Night News』の生放送まで疲労感を引きずるほどに。
行為を思い出しかけてすぐ、頭をブンブンと横に振る。こんなところで赤面するわけにはいかないからだ。
……しかし、
『波音は俺のだって何度でも教えてあげる』
「……っ、」
拒否したって否が応でも頭に浮かぶのは、色気ダダ漏れモードの朝賀碧央の姿。
年がら年中きっちりとネクタイを締めて全国に『おはよう』と『いってらっしゃい』を届ける彼の……、見てはいけないウラの顔だ。
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