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まさか、私が恋人との情事を思い返しているとも知らず、「大丈夫?顔赤いけど」と心配してくれる灰原さんの目が見られなかった。
だって、私と碧央くん、どちらのこともよく知る彼女の目の前でこんなことを考えているなんて気まずすぎる……。
幸い、こちらの荒ぶる内情に勘づくことはなかった灰原さん。しかし、彼女の"勘"は見当違いな方向に働いてしまったようで……
ニマニマと口元に浮かんだ笑みを隠さずに、丸めた右手を頬に寄せた。
「もう、清貫さんいたからってそんなに照れなくても」
「……はい?」
前言撤回。全然"幸い"じゃなかった。たった今、彼女の中であらぬ誤解が爆誕してる。
「よかった〜、久米ちゃんも清貫さんのこと満更でもなさそうで。実はこの合コン清貫さんから頼まれたんだよね」
「え、いや、あの……」
「ちょっと前から久米ちゃんのファンらしくて。この間のインタビューで更に興味持ったらしいわよ?」
朗報と言わんばかりの得意顔で裏事情を暴露してくれる灰原さんだが、できれば知らずにいたかった情報のオンパレード。
やだやだ、うちの碧央くん、私が一方的に好かれるだけでもしょげちゃうのに……
恋人を無駄に傷つけたい人間がいるはずがない。今回は【お仕事】という免罪符もないため、碧央くんの病み方はきっと前回の比ではないだろう。
「あの!私、やっぱり今回は……」
「はいはい、久米ちゃん何飲む〜?カシオレ?私と一緒〜」
「……」
うう、嘘つき。灰原さん、いつも一発目はプレモルのくせに……。飲み放題メニューにプレモル入ってるお店探すの大変なんだから……。
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