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「買っておいてあげる」もイヤ。一緒にゴルフに行くことはないだろうけど、上から目線が鼻につく。
「私、運動音痴なんです。きっと迷惑かけるのでやめておきます」
「じゃあ、飯とか……」
「そうですねぇ、行けたらいいですけど。基本的には夜の生放送抱えてるので予定合わせるの難しくって」
にっこり隙のない笑顔で笑って、失礼がない程度に会話をフェードアウトしようと試みる。
しかし清貫さんは相変わらず私の隣の席から移ることなく、手を替え品を替え自慢話に話題を持っていく。
私の左側には個室の壁、右側には鍛えられた筋肉で膨張する清貫さんの腕。筋肉好きの女子には羨ましがられるであろう状況だが、狭所恐怖症の私からすれば居心地は最悪だ。
こういうとき、どうしても碧央くんと比べてしまうのは、彼を好きになってからの癖。
碧央くんは身長は高いけどスラッとしていて圧迫感がない。それは爽やかで柔和な雰囲気による部分もあるかもしれない。
でも、抱きついてみれば、彼の胸は広くて厚くて男らしく、スーツの上からでは分からないそんなギャップにいつもキュンとしてしまうんだ。
それに、碧央くんは滅多なことでは自慢話をしたりしない。
入社2年目でアナウンサーの花形ともいえる朝の帯番組を任されるという逸話を持つのに「ありがたいことだね」だけだし、俳優を凌ぐほどに整った顔をしていながらそれをひけらかすこともない。
唯一、聞いたことがある自慢話と言えば、「はおちゃんと付き合えてることが俺の一番の自慢。勿体無くて誰にも言わないけどね」だし……。
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