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「だって、波音が……野球選手といちゃいちゃ……」
「してないよ。一生懸命お仕事しました!」
「うん、その一生懸命お仕事してる可愛い姿を全国民に見られたからイヤ」
「全国民が『あさがお』見てると思ったら大間違いだよ」
じめじめと文句を言う碧央くんの隣に座って、彼の背中をよしよしと優しく撫でてあげれば、萎れた花にお水をあげたみたいに少しずつ背筋が伸びてくる。
「野球選手、格好良かった?」
「んーん、碧央くんの方が格好いいよ」
「本当に?」
「ほんと」
答えが分かっていながらの確認作業。好きな人だから許せる。
「はおー」と縋るようにお腹に巻きついてくる腕も、まだヤキモチを消化できていないらしい複雑そうな表情も……可愛いって思うの、本当に恋の病だと思う。
「碧央くん、会社ではあんなにしっかりしてるのにね」
「嫌い?」
「ふふ、嫌い?から入るのやめてよ。本当、家での碧央くんはダメだなぁ」
「じゃあ、好き?」
「好きだよ」
ニコッと笑って頭を撫でる。それによって「よかった」と緩められた表情が恐ろしく美しい。
普段、テレビ用に整えられている髪は無造作におでこを隠し、どんな時間帯のテレビに出てもぱっちりの二重瞼は眠そうに私を見つめている。
「碧央くん、寝ないと。もう少しで出勤でしょ?あと数時間しか寝られないよ?」
「んー……」
「本番中、欠伸でない?」
「スイッチ入ったら欠伸は出ないかな」
瞳を閉じてぎゅーっと私を腕の中に収めながら、低い声で呟いた碧央くんに「さすが、NKMのエースアナ」と心の中で称賛したにも関わらず。
「でも、波音が野球選手に食われそうになってるブイ見た後は顔引き攣りまくったけどね」
棘のある言い方に苦笑い。この人まだご機嫌斜めらしい。
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