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「絶対、ぜ……ったい、次仕事であっても線引きちゃんとしてね。仕事上の関係だってアピールして」
「せ、線って、別に必要以上に仲良くしてるつもりないもん。お仕事だから普通に愛想は良くしておかなきゃって」
「言い訳無用」
「わっ……!」
ニヤリと笑った碧央くんは私に覆い被さり、ソファーに押し倒す。ソファーの肘掛けで頭を打たないよう、ちゃんと手を差し込んでくれるあたりは流石だ。
ふわりと香るシャンプーの香りに心拍数が上がる。
伏し目がちに私を見つめる彼は、あまりの刺激の強さに目を逸らしたくなるほど艶麗。この数時間後、全国の視聴者に笑顔で『おはようございます』を届けるとは到底思えない。
「……碧央くん、寝なくていいの?」
「今日のVTRが頭に残って、もう寝られない」
「疲れない?」
「寧ろ回復すると思うけど」
ゆったりと弧を描いた唇が近づいてくる。目を閉じてそれを受け入れれば、耳を指先でフニフニと撫でて。唇より先に、耳に落ちるリップ音。
「……はーお、俺を妬かせた責任とって?」
「っん、」
聞き取りやすい美しい声。私が彼の声に弱いことを自覚していて、耳から先に説得するなんて至極性格が悪い。
お風呂入ってないよ、とか。碧央くん寝ないと朝の生放送辛いんじゃない?、とか。
拒否しなければいけない理由など、挙げればキリがないほどなのに、朝と夜ですれ違った平日の時間を取り戻したくなる。
もう……あと1日したら土曜日なのに。平日はお仕事頑張って、二人とも帯の生放送がない土曜日だけは一緒にゆったりと過ごそうねって約束なのに。
「……もう、碧央くんの嘘つき」
「たまにはタイムテーブルも崩さなきゃ、つまらないでしょ?」
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