追いつけない

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 でも、やっぱりその頃の四つの年の差は大きくて。  私は中学生になり、高校生になり、大学生になった。幸い浪人はしなかった。  一方その間に真人君は県内のトップの中高一貫校に合格し、一人息子の真人君に合わせて、中学校の近くに家族で引越して行った。 「たまには遊びにおいでね」  引っ越しの日に久しぶりに会った真人君は大分背も伸びて、声変わりをして私より低い声になっていた。 「汐里ちゃん、約束、忘れないでね」 「約束?」 「同じ会社に入ろうって前に行ったよね」 「……ああ、そんなこと、言ってたね。うん、そうなれたらいいね」 「……」    最後に握手をして別れた。小学生の時、学校に行く日、繋いだ小さな手はすっかり大きくなっていた。  大学生になって、初彼が出来た。     穏やかで平凡な付き合いをしていた私達。  地方から出てきて一人暮らしだった彼は私の家に遊びに来て母の作ったご飯を食べたり父親と晩酌をしたりして、家族ぐるみの付き合いをしていた。  漠然とだが、きっとこの人と家庭を持つことになるのかな、と感じていた。  就活の時期になり、彼は自分の地元に帰ることになり、私は県内の会社に採用が決まった。ここでキャリアを積んで、資格を取ったりして、いつかは彼の地元に行って結婚し向こうで再就職先を探そうと考えていた。  でも、大学卒業間近になってから、彼と専門学校の卒業を控えた夏美が私や両親の前で土下座をして 「夏美さんに子どもができました。結婚させてください」 と言った。    それからのことはあまり覚えていない。  父は激怒して彼を殴り、母は大泣きしながら私の肩を抱いた。  夏美はなんて言ったかな?  謝って泣いた気もする。彼は一度も私の顔を見なかった。  ただただ父に殴られながら土下座を続けていた。  折角決まっていた就職先にはお詫びをして、私は地元を離れ、都会に逃げた。    親戚のおじさん、昔私の声をからかったおじさん、が、取引先の大きな会社を紹介してくれた。最初は契約社員の扱いだったけど、幸いなことに二年目で正社員として採用された。  地元には帰っていない。母と電話した時に電話越しに子供の泣き声がして。「ああ、夏美は実家に出入りしてるんだな」と思い、それ以来電話もしなくなった。  思い出した時に母には「変わりなく元気だ」とメールを送っている。
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