追いつけない

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追いつけない

 少女漫画や恋愛小説の中なら「幼馴染」って結構なパワーワードだ。  たいがい近くにいて気づかなかったけど、好きだと気づいて紆余曲折の末に結ばれる、だとか、ずーっと好きで、やっと思いが通じた、とか。  でもそれは「同い年の意地悪な男の子」だとか「ちょっぴり年上の隣の家のお兄ちゃん」ていうシチュエーション。  私にも「小学生の頃からの知り合い」の近所の男の子がいる。  ただ、彼は私より四つも年下の男の子だ。     大人になれば四つの年の差なんてほとんど気にするものでもない。例えば32の女と28の男のカップル。  更に年を取れば更に気にならない。82歳のおばあちゃんと78のおじいちゃんの夫婦。  普通だ。  だけど、出会ったとき小学5年生の私に対して新入生の彼。私には2つ下の妹がいたから登校班の集合場所の公園に母親に連れられてやってきた彼は赤ん坊のように頼りない存在だった。  妹は 「お姉ちゃん!あの子、凄い可愛いね!女の子みたい!」と彼に大はしゃぎだった。  妹は可愛いものが大好きで。小学3年生ではすっかりおしゃれに目覚めていて毎朝鏡の前で髪を伸ばしたり結んだりしていた。 「おはよう!私、加賀美 夏美。三年生だよ。こっちは私のお姉ちゃんの汐里(しおり)。君は?ナニ君?」  私の数倍社交的な夏美は新入生に話しかける。  男の子はさっとお母さんの後ろに隠れる。 「こら!ちゃんとご挨拶しなさい!ゴメンナサイね。ちょっと人見知りなの。この子は大倉真人(まさと)です。よろしくお願いします」  真人君のお母さんが代わりに私達に頭を下げた。  そんな出会いだったけど、真人くんは野生の動物が警戒を解くように少しずつ打ち解けていった。  ただ夏美の天真爛漫さにはちょっと引き気味で、何故かいつも気づけば登校班の時は私の横に来るようになった。  
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