1

2/3
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
 俺は石巻で生まれ育ち、東日本大震災で被災し、高校時代は仙台の親戚の家で過ごして大学は県外に行った。大学生活の4年間を遊んで過ごし卒業後は石巻、ではなく近隣の町の公務員として生活をしている。それでも毎年川開き祭りの時期には渡波の実家に帰省していた。地元が好きなんだね、と周りからは言われている。まあ、嫌いじゃないけど。  3日間か。震災後は2日間だけだったのにな。どんな日程だろう。目の前のパソコンで検索エンジンを開いた時だった。事務室のドアをノックする音がした。見るとそこには若い男性が立っていた。「失礼します」と控え目だがはっきりとした声が聞こえた。箱を両手で抱えて肘でドアノブを押さえていた。俺が立ち上がってドアを内側から開けると「ありがとうございます」と小さく頭を下げた。 「白戸文具です。米谷様の注文されたコピー用紙をお持ちしました」 「白戸さん?」と米谷課長も立ち上がる。「成沢君は?担当代わったのっしゃ」 「あ、はい。成沢は病休中で、僕が代わりに担当になりました」
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!