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 辺りが暗くなる頃、夏祭りによくある光る棒を三本買った。ハカリ君が「ケミカルライトです」と教えてくれた。ケミカルライトか。覚えておこう。そのケミカルライトを三本繋げて輪にして首に掛けた。何となく楽しい。  山の上の神社に続く石段を上る。約250段の石段。左右に植えられた木々からヒグラシの鳴き声が聞こえてきた。顔に纏わりつく木の枝を手で避けながら歩いた。始めは俺のすぐ後ろを付いてきていたハカリ君のペースが落ちていく。俺は一度振り返って彼を待ってから上ったが、またすぐに離れてしまった。 「大丈夫?」 「大丈夫です」  前を見遣るとまだ全行程の三分の一ほど残っている。俺はハカリ君に背中を向けて少し屈んだ。 「おんぶ」 「え、いいですよ」  「熱中症で倒れても困るベ」  少しの間の後背中にハカリ君の体が触れた。両肩を掴まれる感覚を確かめてから彼の太ももを抱えて立ち上がった。ひとりで歩いていた時よりも慎重に一歩ずつ足を踏み出す。手摺を挟んで隣の石段を上るふたりの子どもが俺たちを見て「おんぶしてる、いいな」「あんたは自分で上りなさい」等と話しながら追い抜いていった。 「汗臭くてごめんね」
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