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「いえ、僕もめちゃくちゃ汗かいてるんで」ハカリ君は言ってから俯く。前髪が俺の首に触れる。「子どもに負けるとは」
「子どもはこの先のこととか考えなくていいからね。帰ったら風呂入って寝るだけじゃん。明日仕事だからセーブしとこうとか、考えないじゃん」
「確かに」
石段を上りきりハカリ君を降ろした。「ありがとうございます」と言う彼に軽く手を振って答え、公園の柵に腰掛ける。ハカリ君は隣に座り辺りを少し見渡してから内緒話をするように顔を寄せてきた。
「ずっと訊きたかったんですけど」
「うん」
「なんで付き合おうって言ってくれたんですか」
「俺好きって言われたら割と前向きに検討するタイプだから」俺は答える。「あ、別にそんなにモテるわけじゃないし、他に付き合ってる人いたら話は違うけどね。なんか、別にこっちにその気が全くないから断るのってもったいなくない?」
「あー、ゴウさんっぽい理由だ」
「そうかな」
「えっと、何て言うか」とハカリ君は言い淀んでから「僕のこと変とか気持ち悪いとか思わなかったのかなって」と言った。
「変だとは思うよ」
「あ、はい」
「気持ち悪いとは思わなかったな」
「はあ」
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