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「そうかな」 「成沢さんが戻ってくるまでって思って我慢してたけど、なんか、こういう関係になってからだと恥ずかしいというか」 「でも初めて会ったのは仕事の時だよね」 「そうなんですけど、匂わせ的なこととかしちゃいそうだし、にやけたりとかしちゃうじゃないですか」 「ふーん」ゴウさんは言って「じゃ、我慢大会だね」と微笑んだ。 「大会なんですかこれ」 「にやけるのを我慢する大会」 「僕に勝ち目なくないですか」 「そんなことないよ。俺だってハカリ君に仕事で会えるの嬉しいもん」  またこの人は。そういうことを素直に言えるのは羨ましくもある。でも、だからこそ信用できるんだよな。思ったことがそのまま口から出てくる。こういうのをハイファイって言うのかな。いや違うか。僕ももう少し自分の気持ちに素直になりたいと思った。川開き祭りに行かずにゴウさんを待たせた分は取り返さないと。  というかゴウさん、本当に気付いてないのかな。多分この感じだと気付いてないんだろうな。ああもどかしい。僕の方から言っちゃおうかな。
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