序章:Alea jacta est.

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序章:Alea jacta est.

『夜空を駆けるあの流星群でさえ――アタシのたった一つの願いを叶えてくれはしなかった』  生暖かく、むせ返るような臭いが充満する血溜まりに浸かった頬。全身の至る場所から鳴り止まない痛覚の警告。朦朧と揺れる意識。  アタシはただ赤子のように一つの事しか考えられずにいた。それが今のアタシの意識を辛うじて保っていると言っても過言じゃない。他の事なんてどうでもいい。ただそれだけ。  その一心でこの世界でたったひとつピントの合ったそこへ、アタシは緩慢と――だが全力で手を伸ばした。お世辞にも心地好いとは言えない血の海を這わせるのが精一杯のその手に力は殆ど入っておらず、まるで肉塊を押しているようにも感じだ。それでも懸命に、全力で押し続ける。  全ては君との日々の為……。あれも、これも――全部。  でも、ここまで来たのにアタシの願いは叶わない――アタシは叶える事が出来なかった。 「……アート」
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