椎名くんは笑わない

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「あ」  突然、何かに気がついたような顔つきで、友達の椎名くんが呟いた。   「今日、何日だっけ」 「えーと、一月五日?」  私たちの通う柚月(ゆづき)小学校が冬休みに入ってもう二週間になる。こうも休みが続くと、日にちも曜日感覚もすっかりなくなる。  あまりにも暇だから、近所に住んでいる椎名くんを誘って初詣でも行こうと思い立ったのが一時間前のこと。  正確に言えば、私の初詣はすでに家族と済ませてあるからこれはセカンド(もうで)となる。  セカンド詣という言葉自体が正確じゃないとか、そもそもそんな言葉はないとか先生たちは言うかもしれないけど、二度目に詣でることをなんて呼ぶのか私は知らないし、そんな細かいことは気にならない。  だから、私の中では多分この先もずっとセカンド詣だ。    椎名くんは私と違ってけっこう細かいことを気にする性質(たち)だから、質問したら意外と真面目に調べてくれるかもしれない。  その気にしいな椎名くんが、真顔で私に言った。 「やべー。おれ、今年に入って五日目なのに、まだ一度も笑ってないや」
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