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「椎名くんが読むべきだと思うけど、そんなに周りの目が気になるなら私が読もうか?」
「それが平和かもしれないな」
椎名くんはチェックの封筒を私に渡した。
廊下の端に寄り、人の流れを邪魔しない位置で手紙を広げる。
『椎名くんへ。
あなたにどうしても伝えたいことがあります。今日の夕方、通学団下校の前に体育館の裏まで来てください。最近、あなたの存在が気になって仕方がないOより』
手紙はいたってシンプルにそう書かれていた。丸くて可愛い文字だ。そんなに上手な字ではないけど、女の子が一生懸命に書いた感じがして好感が持てる。
「Oって誰? 心当たりある?」
「分からない。それに、これじゃ愛の告白かどうかもはっきり分からないな。誰にも内緒でどうしても伝えたいこととは何だ? もしかしたら『社会の窓が開いてますよ』的なことかも……」
そこで椎名くんはハッと自分の靴下を見た。
「いや、ないない。靴下、色違いですよって手紙で先回りで書けたらそれはもう預言者」
「だよな。もしも彼女が本当に預言者で、おれの失態を手紙に書いてくれたんだとしても、夕方に教えてくれるのは遅すぎる。もっと早く言ってくれなきゃ! 預言者だとしたら無能すぎる」
「うんうん」
「しかしドジっ子の預言者だとしたらけっこう可愛い」
「あー、そう捉えるかあ」
うっかり夕方まで待たせちゃった。てへ。みたいな?
想像したらけっこう可愛いかもなあ、なんて私も納得してしまいそうになった。
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