椎名くんは告らせない

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 なんとなく俯いたまま下駄箱までやってきた。  すると私は、何故かそこに椎名くんの背中を発見した。  今頃は体育館の裏にいると思っていたのに。 「椎名くん? どうした」 「うん」  椎名くんは振り向く。いつもの真顔だ。 「よく考えたらさ、預言者の言葉を聞くまでもなく、靴下のことは気づいていたわけで。それならもうわざわざ聞きにいく必要もないかなって」 「行かなかったの⁉︎ もう、何やってんの! 通学団下校が始まっちゃうよ?」 「うん。だからさ」  椎名くんは上履きを脱いで下駄箱に戻す。彼の足元は色違いの靴下だ。 「おれの靴下がこんなんでも平気でいられる女子と、俺はいたいんだよ」  何だそれ。鼻の下がむず痒い。  私はわざと雑に上履きを脱いで下駄箱の蓋を開けた。 「あーあ。そんなんじゃ、大人になっても彼女なんかできないよ?」 「別にいいよ」  椎名くんは私を見てフッと笑った。 「おれには、藤川がいるし」 「……は?」  下駄箱から取り出しかけた運動靴を危うく落としそうになる。   「私ゃ別に椎名くんの彼女じゃないんですけどね」 「もちろんそうなんだけど、藤川といると楽しいしさ」  やけに鼻の頭が焼ける。おのれ夕陽め。熱いからとっとと沈んでくれ。  眩しくて椎名くんの方が見れやしない。  お天道様に悪態をつきながら、私は椎名くんと並んで校舎を出た。    すると。 「あれ? 椎名くん?」  背後から、女の子の声がした。
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