椎名くんは告らせない

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 振り向くとそこには、沢田くんと佐藤さんがいた。  二人は隣のクラスの微笑ましいカップルだ。  最近、椎名くんは沢田くんにちょっかい出すのがブームになっていて、その時いつも一緒にいた私と佐藤さんも巻き込まれた形でいつの間にか仲良しになっていた。  その佐藤さんが笑顔で言う。 「小野田くんとの話、もう終わったの?」 「えっ? 小野田……くん?」  小野田くんといえば……うちのクラスの金髪ヤンキー。  今朝、下駄箱で邪魔だと叱られたことを思い出す。  普段はもちろん、私たちのような普通の小学生とは縁遠い存在。  そんな彼の名前がなぜ突然浮上したんだろう。 「あれ? 椎名くん、小野田くんに体育館の裏に呼び出されてなかった? 小野田くんが『沢田のライバルを公言するなら俺にも話を通してもらわないと』って言ってたよ。私の便箋貸してあげたの、届いてなかった?」 「まさか……」  椎名くんは預言者の大橋さん(仮)からもらったチェック柄の封筒を取り出した。 「これ⁉︎」 「そう、それ。小野田くん、沢田くんがいつもぼっちだから自分と同じ匂いがするって親近感を持ってるみたいでね、ずっと沢田くんのお友達は自分だけだって思ってたみたいなの。だけど最近、椎名くんが沢田くんとよく絡んでるから、椎名くんの存在が気になって仕方ないみたいで。見た目は怖いけど、繊細な子なんだよね」 『最近、あなたの存在が気になって仕方がないO(オー)より』  手紙にも確かにそう書かれていたけど……。 「いや、怖いって!! 金髪ヤンキーの見た目で、この丸っこい字ですか⁉︎ 完璧に年下の子だと思ってたよ! 恐怖倍増だよ!」 「あと……オレ、あの子と友達じゃない」  沢田くんがボソッと呟く。 「それが、一番怖い……」  確かに、金髪のヤンキーに友達だと思い込まれてここまで行動されたら怖いな。 「椎名くん、今からでも体育館の裏に行ったら? 無視したら後で何されるか分かんないよ」  私は椎名くんを見た。椎名くんは青い顔をしてガタガタ震えながら言った。 「今日、靴下の色を間違えてて恥ずかしいから……絶対行かない」
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