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椎名くんと私は四年生の時に初めて同じクラスになった。通学団が一緒だったから近くに住んでいたのは知っていたけど、それまではあんまりしゃべったことがなかった。
たまにこうして外でも遊ぶようになったのは、五年生でまた同じクラスになってからだ。お互いに女子のグループや男子のグループでまとまって遊ぶことにはこだわりがないという変わり者だったせいか、いつの間にか一緒にいて一番気が楽な友達になっていた。
だけど、一緒に遊んでいても椎名くんのことはいまだによく分からないところがある。
しゃべり方は小学生とは思えないほど可愛げがないし。
そもそも椎名くんが笑ったところを私はあんまり覚えていない。
この子の笑いのツボがさっぱり分からない。
「どういうので笑うの、椎名くんは。去年イチ笑ったの、何?」
「えー教えたくない」
「なんで⁉︎」
「それで思い出し笑いでもしたらどうすんの。去年の古いネタで今年の初笑いとか、最悪じゃね?」
椎名くんは真面目に変なことを言う。
「藤川は初笑い何だった?」
「覚えてないなー」
「マジで? 気にしないの?」
「気にしないよ。多分、適当に動画見てて誰か知らん人の投稿に笑った」
「そんなんで笑ったの⁉︎ もったいなくね⁉︎」
「いや、意味わかんないし」
「もっと初めてを大事にしろよ。ショックだわ、藤川がそんな知らん奴に初めてを奪われるなんて」
「誤解を招きそうな言い方やめて?」
「……いや、ほんとマジでごめん」
椎名くんは深刻な顔で謝る。
「……ねえ、ちょっと、変な空気にしないで?」
私のツッコミを無視して、椎名くんは青い空を仰ぎ見る。
「ああ〜笑うって難しいな〜」
そんな真面目に悩んでんの、お前だけだよ。
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