椎名くんは譲らない

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「あ」  突然、何かに気がついたような顔つきで、友達の椎名くんが呟いた。  いつもの平和な昼休み、給食で出た大好物の焼きそばパンを、私が大きな口で頬張ろうとしていた時のことだ。  この焼きそばパンは、普通のコッペパンに切り込みを入れて、そこに焼きそばを差し込んだ私のオリジナルの食べ方だ。焼きそばだけでも美味しいけど、コッペパンに挟むとさらに美味しい。  これぞまさに世紀の大発明。  椎名くんはそんな私の食べ方を見て、目を丸くしたようだった。  彼の皿の上には焼きそばだけが残っていて、コッペパンは先になくなっていた。   「藤川……! お前、何やってるんだ」 「うん? 羨ましいか椎名くん。私が考案した新メニューの焼きそばパンだよ」 「いや、全く新しくないしお前が考案したわけじゃないだろう」  椎名くんにしては的確なツッコミだな。   「まあ、別にいいじゃん。どんな食べ方したって」  「知らないのか? 藤川。コッペパンにまつわるうちの学校の七不思議を」 「七不思議? そんなもん、うちの小学校にあったっけ?」  焼きそばパンにかじりつこうとした私に、椎名くんは真顔で迫った。 「コッペパンに何かを挟んでオリジナルなパンにしてしまった生徒は、一番近くにいる人と必ずシェアしなくてはいけない。さもないと、恐ろしい不幸が襲いかかるという」  何それ。聞いたことないんだけど。
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