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「でも、いいんだよ。どうせおれっていつも真面目そうな顔をしながら変なことばっか言ってたからさ、本当のこと言っても誰も信じてくれなかったと思う。一人だけ、信じてほしいヤツがいたんだけど──そいつも結局、おれの話は冗談だと思い込んでて真剣に聞いてくれなかった」
「お前がいつも話してた女の子のことか。バカだなあ、ちゃんと告白しないからそうなるんじゃないか」
好きだったんだろ、と椎名くんのお父さんらしき人が言った。
「うん……」
椎名くんが頷いた。
嘘だよ。
嘘だって言ってよ。
「今からでも言ってきたらどうだ」
「もう、遅いよ」
「後悔しないのか?」
後悔するぞ。
椎名くんの捨てゼリフが、私の頭の中でリフレインした。
後悔なんてしない。
それは、創作だったらの話。
創作じゃないなら、話は別。
最後の一口をあげれば良かったなんて、ずっと後悔し続けるなんて、そんなの私は──絶対に嫌だ。
「椎名くん!」
私は電柱の陰から飛び出した。
引っ越しトラックの荷台の前で立ち話をしていた二人が振り返る。
……まったく知らない顔の、ハゲたおっさんとデブの小学生が。
誰だよ、お前ら。
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