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「別に、そんなに構えなくてもいいんじゃない? ほら、あの二人見てごらんよ」
私は初詣帰りと見られる中学生カップルを指差した。
おみくじの結果を二人で見比べて、何やら楽しそうに笑い合っている。
「ああいうのでいいんじゃない? 初笑いって」
「何が書かれているんだろう。気になる」
椎名くんはカップルの方へ歩いて行った。
おいまさか、聞く気?
「すみませーん。何がそんなに楽しいんですか?」
聞いたよあのバカ。
私は慌てて止めに入った。
「ちょっと、やめなよ! ケンカ売ってるみたいに思われるよ!」
「あ、そんなつもりはまったくありませんよ」
椎名くんの目が全く笑っていなかったからか、楽しそうに笑っていたカップルは気味悪がって逃げて行ってしまった。
「解せぬ」
「ダメじゃん、若いカップルの楽しいひとときを正月早々ぶっ壊しちゃ」
「藤川、俺たちもおみくじひこう。何が書いてあったか気になる」
「どうせ面白いことは書いてないよ。あの人たちは箸が転がってもおかしいお年頃だったんだよ」
「いや、もしかしたらもしかするかも」
椎名くんは何やら期待値を高めておみくじを引きに行った。
お参りまだなのにな。仕方なく私もそれに付き合う。
「さあ、いよいよ降りてくるぞ、笑神様が!」
テンションだけは上がってきた椎名くん。
折り曲げられたおみくじを、同時に開く。
「出た、ドン! 吉!」
「私は末吉」
「…………」
「…………」
「…………凶は?」
どうやら思ってたんとちゃうかったようだ。
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