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「それにしても、ちっちゃい頃に埋めたタイムカプセルのことなんてよく覚えてたね」
椎名くんが桜の根元を掘り始める。
「新学期が始まる前に机の中整理しろって母ちゃんに言われてさ。それで、古い日記を見つけたの」
「あるあるだなー」
「おれ、三日で書くのやめてたよ。びっくりした」
「いや、椎名くんらしいわ」
私も素手で掘るのを手伝うけど、乾いた土はなかなか強敵だった。
「だけどその日記がさ、ただの日記じゃなかったんだ。なんと未来日記だったんだよ」
「何それ」
「七年後のおれの行動がそこに書かれてあったんだよ。七年後の四月一日、つまり今日。お前はタイムカプセルを掘り起こすって」
未来日記か。なんか面白そうなことやってたんだな、椎名くん。
それなのに三日で飽きるところが彼らしい。
「すげー気になっちゃって。タイムカプセルなんてすっかり忘れていたから、中身のこと全然覚えてなくて」
「それは気になるよね」
「しかもさ、掘り起こす時、必ず一番の友達か好きな女子を連れていくことっていう条件があったんだよね」
土を掘る手が一瞬止まりそうになった。
私が椎名くんの一番の友達? ……それとも、好きな女子?
ちょっと待ってよ。急にそんなこと言われても。
焦る私の隣で、椎名くんは笑いながら言う。
「急にそんなこと言われても、俺友達いないからさ。それで仕方ないから近所にいる藤川でも呼ぶかって思って」
「冷蔵庫にある食材で適当に作りました、のテンションじゃん」
ありあわせにも程がある。
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