椎名くんは振り返らない

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「ぎゃあああ!」  私は足元に開いた穴にお尻までズボッとハマった。  は? 落とし穴? 「テッテレー♪」  私の目の前に『ドッキリ大成功』の文字が書かれた紙が突きつけられた。 「えっ? 何これマジで!」 「まだ分かんないのか藤川。ドッキリだよドッキリ。このミイラの手はおれが工作で作った粘土の偽物だよ」  ポンと目の前に手首を放り投げられて、私は悲鳴をあげた。  でも冷静になってよく見ると、粘土をそれっぽい形にして黒く塗っただけだということが分かる。 「未来日記の話もタイムカプセルの話も嘘だよ。藤川をここに誘き寄せるために、きのう一日がかりで作ったんだ。どう、面白かった?」  そういえば、未来日記には七年後の四月一日って日付が指定されていたっけ。  四月一日。つまりエイプリルフールだ。  真実が分かって、私は一気に脱力した。 「このサイコ野郎! めちゃくちゃ怖かったじゃん!」 「いやー、いつも冷静な藤川がここまでビビるとはな」  椎名くんが笑いながら私に手を差し伸べた。  悔しいけど、心底楽しそうないい笑顔だ。  私は照れ隠しに、握力がバカだと言われそうなほど強く彼の手を握りしめ、穴から脱出した。  心臓がまだドキドキしていた。
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