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◇
「……なんてことがあったんだよね」
「へえ〜、椎名くんに偶然三回も会ったんだ」
GW明けのダラダラした月曜日、私は教室で佐藤さんに休み中の出来事を語った。
「一日に四回以上偶然出会ったら運命の歯車の呪いがかかるっていう七不思議、ほんと? 私らそれ恐れて、外出る時にはお互いに居場所伝えるようになっちゃったんだけど。それでお互い暇ならたまに一緒に遊んだりする。約束して会えば偶然ってことにならないからセーフだって椎名くんが言うから」
「それって、ただのデートじゃない?」
さすが佐藤さん。すぐに気づいてくれる。
「だよねえ、偶然会わなきゃいいっていう問題じゃないよね」
「うんうん。それにもう二人は呪いにかかってる気がするよ」
佐藤さんは意味深な笑顔でニコニコしている。
やだなあ、その笑顔。何だか全てお見通しっていう気がして。
「佐藤さん……今の話、本当ですか」
声に振り向くと、沢田くんが青い顔をしていた。
沢田くんは佐藤さんの彼氏だ。すごくイケメンだけど、今日は顔色のせいか何だか具合が悪そうに見える。
「どうかしたの? 沢田くん」
「……きのう十回、会ってしまったのですが」
沢田くんは泣きそうな顔で、金髪ヤンキーの小野田くんの方を見た。
「運命の歯車?」
「あ、大丈夫だよ沢田くん。それも偶然じゃないから」
小野田くんは沢田くんと友達になりたくて、低学年の時からずっとストーカーしているという話だ。沢田くんも狙われ続けていて大変だな。
「運命の歯車かあ」
私はまた椎名くんのことを考える。考えるうちにどうでも良くなる。考えても無駄のような気がする。
だってそれが椎名くんだ。
きっと彼は、何も気にしない。
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