椎名くんは迷わない

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「なあんだ、ただのクラスメイトかあ」  女の子はきゅるんとした瞳を嫌な感じに細めた。バカにしている表情にも見える。 「椎名くん、この子は?」 「ああ、おれが三年の時、同じサッカークラブに通ってた子。おれは面倒くさくなってすぐにクラブ辞めちゃったんだけどさ。名前は道枝だから、略してみっちー」 「みっちーでーす! よろしくねっ!」  みっちーは片目を上下に挟む形でピースした。    はい。ニガテー。  キラキラのJS。絶対自分が可愛いって自覚してるよね。いいんだけど。私には関係ないし。好きに生きたらいいけどね?  適当に頭を下げて、買わないつもりでいたパンフレットをもう一度手に取って読むフリをする。話しかけんなオーラ出したら、椎名くんたちは私の横でおしゃべりをし始めた。 「椎名くん、みっちーのこと覚えてくれてたんだ。超嬉しい!」 「忘れられないよ、みっちーのことは」  何だそれ。どういうこと? もしかして、好きだったとか? 「ほんと、可愛くなったな、みっちー。見違えちゃったよ」 「やだあ。照れちゃう」  そんなこと、私には一度も言ったことないよね椎名くん。  まあ、毎日会ってて急に可愛くなることはないから言われなくても当たり前だけどさ。   「せっかく久しぶりに会ったんだし、一緒にゲーセンで遊ぼうよ!」  みっちーが椎名くんを誘う。私のことは眼中にありませんか。これが伝説の死語、アウトオブ眼中か!  こういう奴に限って家では「クソだりぃ〜」とか言いながらオナラ連発でのりせんべいをかじってゴロゴロしてるんだよね。  あ。やばい、親近感が湧く!  ダメだこの想像は。私の普段に近い。オナラは連発してないけども。
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