椎名くんは迷わない

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「ごめん、みっちー。今日は藤川と一緒に来てるからさ」  モヤモヤしてたら、椎名くんが迷わずキッパリとそう言った。  何だそのイケメン発言。  椎名くんらしくないな!   くそっ、ニヤニヤしてしまう!  私はパンフレットで赤くなっていそうな顔を隠した。するとみっちーは。 「ええ〜っ。一緒に行きたい〜。みっちーも連れてって? いいよね、藤川さん」  いいわけないだろ。空気読め。  こいつのおかげですっかり真顔になれたわ。  私はパンフレットを下ろして能面ヅラを見せながら言った。 「じゃあ、二人でどうぞ。私は人見知りしちゃうから帰るわ。私がいない方が二人も楽しいと思うし」  さあどうする椎名くん。  私とこの子、どっちを取るの?  ……なんてね。  どうせ私はただのクラスメイトだから。  多分あとで捨てちゃうと思うけど、このパンフレットを買いに行くフリしてここを離れよう。それから一人で家に帰ってのんびりのりせんべいでも食べよう。  モヤモヤしすぎてもう限界。  どうせ私はただのクラスメイトだから! 「待てよ、藤川!」  その時、椎名くんが私の腕を掴んで引き止めた。  えっ、引き止めた……だと⁉︎   「なんで勝手に帰んの。おれは藤川といたいんだけど」  ちょ、ま、ま、待てや!  何じゃそりゃああああ!  耳まで火照る。体が内側からジンジン熱い。  椎名くん、どうした⁉︎  君はそんなキャラじゃなかったはずなのに。  これじゃ毒も吐けやしない。  私の毒気を抜いてどうする気だ。私から毒を抜いて何になる⁉︎  すると、みっちーが椎名くんの腕を引っ張った。 「もう、椎名くんってば。帰るって言ってるんだから帰らせればいいのに〜」  ……てめえが帰れや、このクソぶりっ子が!!  あ。特大の毒出た。
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