椎名くんは迷わない

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 結局、椎名くんはみっちーとその場でバイバイした。  そして今は私と二人でゲーセンにいる。  こうなるとおかしなもので、悪いことしちゃったような気持ちになる。 「……良かったの? みっちーとバイバイしちゃって」  上目遣いに尋ねると、椎名くんは当然というような顔をしてうなずいた。 「いいんだよ、今日は藤川と約束してたんだから」 「でも、久しぶりに会ったんでしょ? 私となんてほぼ毎日会えるのに」 「あ、ほんとだ。気が付かなかった」  椎名くんはふにゃっと笑った。  これは優しさなのか? ただのバカなのか?  優しさだったら少し好感度上がるんだけどな。椎名くんは読めない男の子だ。もしかしたらただのバカかもしれない。  私はUFOキャッチャーの景品を品定めするフリをして、椎名くんの顔をこっそり見た。   「可愛い子だったね。もしかして椎名くん、あの子のことが好きだったりした……?」  嫉妬の塊みたいな発言だったかな。  すぐに後悔する。  過去のことなんか気にしなくても、今は私といることを選んでいるんだから、それでいいじゃない。  いや、そもそも私はそんなことを気にする立場じゃない。  やだな。  あの子がいなくなったのに、ずっとモヤモヤしてる。  すると、椎名くんがバフッとふき出した。  「な、何がおかしいの?」 「だって、藤川がありえないこと言ってっから」  椎名くんはゲラゲラ笑いながら私に言った。   「あいつ、男だぞ?」
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