椎名くんは迷わない

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 ん?  んんん?  私は極限まで首を横に倒した。 「男?」 「うん。あいつの本名は道枝大吾(みちえだだいご)っていうんだ。女装が趣味なんだってさ。あんなインパクトあるやつ、忘れられないよ。それにしても女装のテクが上がっててびっくりしたなー。マジで可愛くなっててさ」  忘れられないって、そういう意味でか。  可愛くなったって褒めた理由も、そういうこと?  どうりであんな美少女のお誘いを迷いなく断ったわけだ。 「まあ、いくら可愛くてもそっちの道には興味ないからなあ」 「なーんだ、そうだったんだ」  私はようやく心から笑えた。  浮かれて、ついパンツマンとかいう変なヒーローもののフィギュアのUFOキャッチャーにお金を投入しそうになる。  そんな私を見つめて、椎名くんはふにゃっと笑った。 「でも、もしもみっちーが本当の女の子でも、おれは藤川を選んだけどね」 「へ? な、なんで……」 「だって、表情がくるくる変わっておもしれーんだもん。みっちーのことすごい顔で睨んでたよな。あ、こりゃみっちー殺されるなって思った」 「うそ、そんな顔してた?」  無意識って怖い。   「ほんと可愛いよな、藤川って」 「いや、それほどでも……」  私は笑顔のまま固まった。    ……え、今の話のオチはどこ?
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