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「見当たらないんだ。僕の薬が。ねぇ雪知らない?」
「貴方また失くしたの?最近毎日なくしてるわね」
「なくなるんだよ。毎晩風呂上がりに、ここへ置いてるのに」
「でも変ね。その引き出しの上。私も貴方も届かないのに、一体誰が盗んだのかしら?」
「解らないよ。だから尋ねているんじゃないか」
夫婦の声が木霊する。
『いつもここに置いてくれるのは、嬉しいけど。少し高くはないか?もう少し手の取りやすいとこにしてくれよ』
『イヤね、貴方。いつも自分で置いて飲んでるじゃないの』
最初の夫婦は、湯煙に仰がれて、夫が薬を毎晩高い棚へ置く。
後者の夫婦は、夫がいつも置かれた薬を飲んでいた。
一組目の夫婦は軽く、透き通り。
二組目の夫婦は、自らの足で歩き、見て回ったこの家を買った。
一組目の夫婦の声は響かず。
二組目の夫婦の声のみ、この家には木霊するのだ。
さぁ、あなたはお気付きだろうか。
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