14 大事な初恋の人へ[side 燕]

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* * *  ホープ君と一緒に部活から帰ってきて、シャワーを浴びた私は、部屋で宿題に取り組んでいた。  英語の文章を読解しながら、シャーペンを走らせる。普段なら、どれも簡単な問題、だけど…………。 「っ…………」  無心で問題に向き合おうとしても、涙で視界が滲んで上手く読めない。  聖夜さん、あんなに幸せそうに笑ってた。きっと、彼女のことが大好きなんだ……。  彼女、遠くから見ても分かるぐらい可愛かったな。シャツワンピースから覗く手足はスラリとしてて、私よりも背が高くて、でも華奢で…………。  それに、私が知らない人ってことは、中等部の生徒じゃないってこと。つまり、高等部か、それより年上か……。  っ…………私みたいな子どもじゃ、勝ち目なんてないよ。  悔しくて出た涙がポツリとプリントに落ちた。  ああ、もう。泣いててもどうしようもないのに…………。  私はお風呂上がりから肩にかけていたタオルで涙を拭おうとして、止めた。なんでかって言うと、あることに気づいてしまったから。 「これ、聖夜さんがくれたやつだ……」
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