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薄い青緑の生地に、「全力!」とかっこいい文字でプリントされているタオル。これはこの前の誕生日に、お兄ちゃんと聖夜さんと柊さんが一緒に買ってくれたものだった。
──燕ちゃん、もうすぐ中体連だろ?だから、応援したくて俺が選んだんだ。気に入ってくれると嬉しいな。
そう言って、明るく笑いながらこれを手渡してくれた聖夜さん。私は、自分のことを考えて贈り物を選んでくれたんだって知って、とにかく嬉しくて……。
ますます、聖夜さんが好きになってしまったんだ。
っ…………ああ、嫌だな。諦めたく、ないな…………。
そう思った時、ふと先程のホープ君の言葉が蘇った。
──伝えてから、諦めましょうよ。
「っ…………そうだ。私、まだこの気持ち伝えてない。なら…………」
私は宿題をする手を止めて、レターセットを取り出した。
朝顔の花が描かれた、可愛らしい青色の便箋。本当は、離れて暮らしてるお父さんとお母さんに手紙を送ろうと思って買ったものだった。
私の大事な人に、気持ちを送るための便箋。大事な人っていうのは、家族だけじゃない。聖夜さんだって、私の大事な初恋の人だから。
私の気持ち、しっかり書こう。書いて、伝えよう。
そう思って、ペンを走らせようとした時だった。
コンコンコンとドアがノックされて、
「燕ちゃん、いる?」
春花さんの明るい声が聞こえたんだ。
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