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…………手紙?
聖夜の手の中にあるものをよく見ると、燕が父さんと母さんに手紙を書くために買っていた朝顔柄の封筒だった。
「その手紙……ラブレター!?」
柊が驚いた様子で声を出す。
「えっ!?ら、ラブレター……って、燕ちゃんが俺に……?」
「わ、分かんないけど!女の子からの手紙なんて……大体がラブレターだよ!少女漫画に書いてあったもん!」
……………………。
燕が、聖夜にラブレター……?
じゃあ、燕の好きな人って…………。
「聖夜だったのか…………」
「聖夜、中身読んでみて!」
「えっ……、えっと…………」
聖夜が手紙を読み始める。しばらく読んで……頬を染めながら、小さく呟いた。
「ラブレター、だ…………」
「や、やっぱり……!ど、どうするの!?」
「どうするって言われても…………どうしたら、いいのか……」
聖夜は少し困惑した様子で、視線をさまよわせる。燕に不満でもあるのか……そう、言いたかった、けど。
俺は知っていたから。こいつに、好きな人がいるって…………。
そして、その恋はきっと叶うってことも、昨日の2人の様子を見て気づいてしまったから。
だから、燕の想いに応えてくれって言えなかった。
でも…………。
「聖夜」
俺は聖夜を真っ直ぐに見つめて、短く告げる。
「燕から逃げたら、許さない」
「っ…………!」
燕の恋を、叶えてやることはできなくても…………その気持ちを無下にはさせない。絶対に。
それが、兄として、俺がしてやれる唯一のこと。そう思ったから…………。
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