1 君との出会いとサッカーボール[side 聖夜]

6/6

6人が本棚に入れています
本棚に追加
/113ページ
 朝日に照らされる、優しい茶色の髪。その髪は片側にまとめられて、高い位置で結われている。そして、髪留めの黄色いリボンに負けないくらい明るい、蜂蜜色の大きな瞳…………。  彼女と目が合った瞬間……時間が、ピタリと止まった。  何故かは分からない。俺は、ただ……彼女に見とれてしまっていたんだ。 「あの……このボール、あなたが?」 「えっ!?あ、そ、そうです!!」  い、いけない。何してんだ俺。早くボール持って帰らなきゃ……。  俺は慌てて彼女に駆け寄って、ボールを受け取った。 「拾ってくれて、ありがとうございます!」 「あ……ううん、気にしないで。あなたの役に立てて良かった」  彼女はそう微笑むと、静かに校舎へ向かって歩いて行ってしまった。俺は、その背中を、ただ呆然と見送った。  ……何か分かんないけど、俺、フワフワしてる。何だろう、この気持ちは…………。 「宵月ー!何してんだ、早く戻ってこーい」 「え……あっ!」  そ、そうだ!今、朝練中だった! 「すみません!すぐ戻ります!!」  先輩に呼ばれて、大慌てで練習に戻った俺だけど……その後の練習中も、彼女のことが気になり続けた。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加