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顔を真っ赤にして、佐倉君を睨む翔太君。一方の佐倉君は、それに怯む様子もなく、ヘラヘラ笑いながら
「あはは!分かった分かった。俺、教室行くわ。じゃあ2人とも、挨拶運動頑張れよ~!」
と手を振って、校舎の方に歩いていった。
「あ、佐倉君、ありがとう!」
「……はぁ、やっと行ったか」
翔太君は溜息をついて、私を見ると、真顔で
「あいつの言ったこと、気にするなよ。頼むから」
と告げてきた。
「佐倉君の言ってたことって…………翔太君が私の言葉に素直だってこと?」
「っ…………そ、それもそうだけど……その、気持ちが、どうとか……」
「あぁ、そっちか。……気にするも何も、私よく分からなかったよ」
「そ、そっか。ならいい」
翔太君は安堵の表情を浮かべる。なんだろう、そんなに知られたくない気持ちなのかな?
……気になるなぁ。
「…………佐倉君に聞いたら教えてもらえるかな」
私がボソリと呟いた一言。それを聞いた翔太君が、再び真っ赤になる。
「だ、だめだ!絶対聞くな!!いいか、絶対だぞ!!」
「えっ、う、うん。分かったよ……」
翔太君の必死の形相に、戸惑ってしまう私。そんなに隠したい気持ちなんて……翔太君、一体何を抱えてるんだろう。やっぱり気になる…………。
でも、無理やり聞くのも良くないよね。誰にだって隠したいことはあるだろうし。うん。
気持ちを切り替えて、挨拶運動頑張ろうかな。私はそう思い直して、再び、道行く生徒に向かって元気よく挨拶をし始めたのだった。
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