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……雨足が強くなり始める。こんな所にいたら、風邪引いちゃうってことぐらい分かってた。でも……家に帰る気にならなかったんだ。
あんなに酷いこと言って飛び出してきちゃったんだから、父さん、カンカンだろうな……。きっと、怒られちゃうよ……。
……いや、もしかしたら、俺のせいで、もう家を出ていっちゃったかもしれない……。
そ、そんなの嫌だ!どうしよう、どうしよう…………!
どうしたらいいか分からないまま、ただ雨に降られるがままになっていた、その時だった。
俺の身体に降り注ぐ雨が、誰かの傘で遮られたのは。
「ねぇ、どうしたの?」
頭の上から、鈴を転がすような声が聞こえて、顔を上げると……茶色いツインテールの女の子が、蜂蜜色の大きな瞳で、不思議そうに俺を見つめていたんだ。
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